札幌市内のほとんどどこからでも見える藻岩山の山頂には、最近、クレーンのような機械が現れている。さらに、展望台までの道路も閉鎖中だし、ロープウエイも休業だ。何回も登ったことがある藻岩山には何が起こっているのか、登山道はどうなっているのかを気になり、また登ることにした。今回は夕方あたりに登って、夕日も見て、そして真っ暗になるまで下山するという計画を立てた。(結局、また夜登山になってしまったんだけど・・・)

環状通と藻岩山
南10条付近の環状通。マンションの後ろに藻岩山の姿が見える

私の短い旅はすすきのから始まった。そこで用事を済ませて(酒飲みではありません!)、15時半ごろに藻岩山の方へ足を向けた。いいえ、すすきのから藻岩山までぜんぜん近くない!ただ、散歩することが好きだけだ。そして、昔にはよく札幌市内でも郊外でも長い散歩をしていたので、久しぶりにこの懐かしい感じを改めて味わいたかったんだ。

藻岩山と円山の間を目指して、大きな通りや小さな道をジグザグで歩き、大まかに方向を守りながら40分ぐらいで緑の多い住宅地域に着いた。近くの公園で子供が何十人も遊んで、野球場にも子供の試合があった。このにぎやかな公園の名は、当たり前のこと、「緑ヶ丘公園」だ。

公園から少し離れて、森の中へ導く階段を見つけた。上ってみたら、もう山の中に入ったような感じがするけれども、間もなく階段が終わり、また町に出る。ここからすぐ藻岩山麓通に出て、左(南)に行く。

慈啓会病院から藻岩山への登山ルートは行ったことがあるけれど、私が昔に初めてそこを登ろうとしたとき、登山口への分岐を間違えて、変なところから入ったので、なんとひどい藪漕ぎまでなってしまったという思い出が頭に残っている。今回は地図と看板をきちんと見ながら藻岩山麓通を進む。

分岐の目印は、まず、「慈啓会前」の停留所が一番分かりやすい。分岐の交差点の上には「さっぽろ慈啓会」の大きな看板もある。さらに、電柱に「慈啓会病院」の小さな看板も付いてある。南側から進む場合、登山口を示す道路標識もある。

藻岩山麓通から離れ、観音寺、慈啓会病院、慈啓会老人保健施設を通り過ぎたら、公衆トイレが付いた狭い駐車場(約20台)に着く。ここは登山口になっている。入ろうとしたら、なんと「熊出没注意」看板があった!藻岩山に熊???登山口から1キロぐらいの所で熊のうなり声が聞かれたという。

なんと、翌週は本当に藻岩山で熊の親子が見られたというニュースがあった!さらに、その後、熊出没が相次いでいて、登山道や周辺の公園までも閉鎖になってしまった。

慈啓会コースの谷状地形
地形が谷状に変わって、斜面が急になるところ。ここを登りきると尾根に出る

時間はもう16時半だ!僕は今日の最後の登山者じゃないかと思ったとたん、他にも何人か私とほとんど同時に山に入った。他の外国人男もいた。こんな時間だから、みんな、夕日を見に行くに違いない!

慈啓会コースは、よく整備されている綺麗な笹の道だ。近くの円山の88ヶ所めぐりコースと同じように、小さな観音像と地蔵が登山道に沿ってあっちこっちに置かれている。

スキーリフトの跡を過ぎたら(登山口から1kmぐらい)、登山道がほぼ平らになり、斜面をトラバースする。横から入っている夕方の日射は周りの森を明るくて鮮やかにしていた。朝か昼に登るときに味わえない、特別な雰囲気だ。

しばらく歩くと、さっきと逆に、日射が全く届かない、急な谷に入り込む。暗くて、もう夜だという感じ。ここからジグザグの道がこの谷の源流まで登り、間もなく尾根に出る。

ところで、一週間後、またこのルートを登った。ちょうど大雨が降った直後のことだった。大雨の影響で、この谷を流れた小規模な土石流の跡もあり、登山道も一か所崩れていた。

尾根には、小林峠と藻岩山を結ぶ長い縦走路が走る。分岐のベンチで短い一休みしてまた出発。日が暮れる時間が近づいてきているので、途中の展望台もパスして急いで登る。

尾根道が藻岩山斜面に近づいたら、ジグザグ道に変わる。ここは岩が多く、階段状で登りやすい。

工事中の藻岩山展望台
藻岩山山頂の展望台が完全に再建設されている

山頂の展望台は完全に崩されて、再建設されている様子。下から見えたクレーンや重機もあって、作業員も何人かいて、休日にもかかわらず建設真っ最中だった。工事現場入り口付近のフェンスには、建設後のイメージが描かれているポスターが張ってあった。けっこう奇麗になりそうなので、工事が終わったら、一回見に来たい。

工事現場はフェンスで囲まれているので、もちろん全方向のパノラマは一気に楽しめることができない。しかし、小さなお寺の下を潜って、フェンスに沿って左に進むと、東側への展望が得られる(工事標識には「行き止まり」と示されている場所)。工事フェンスと笹の壁に挟まれた展望台はとても狭い。

東側の登山道(スキー場コース)までフェンスに沿ってこのまま進もうとしたんだけど、行けそうではない。仕方なく、工事現場を西側から回って、道路まで来た。その道路に沿って歩けばスキー場コースに出れるはずと思った(実際にも正解だった)。

工事用の駐車場
工事用の駐車場付近からの眺め。夕日に赤く染めた恵庭岳(左)と空沼岳(右)の輪郭が綺麗だ

下山する前に、せっかくなので、しばらく夕方の景色を眺めていた。ここから南側への眺めが最もよく、夕方の霞に沈んでいる山々の風景が素晴しい。支笏湖周辺の紋別岳、イチャンコッペ山、樽前山、不布死岳、定山渓付近の札幌岳から空沼岳までの長い尾根も一望できる。

さあ、早く下山しよう。懐中電灯も持ってないし・・・

道路脇に沿って、歩行者(ここでは登山者)が歩くためのスペースが鉄の杭に付いたロープで示されている。ロープウェイの駅から山頂の展望台までは大規模な工事が行われていることが道路から見える。もちろん、山頂直下の登山道は使えない。

次の急カーブでは(山頂から約1km)、歩行者用のロープが終わり、左に林道が分岐する。工事情報看板によると、ここは藻岩山スキー場コースの臨時入り口だ。ところで、ここからの景色もなかなか良い。

この林道を100mぐらい進むと、通常の登山道にぶつかる。ここより上の部分は、もちろん、工事で閉鎖中だ。

藻岩山スキー場コース
藻岩山スキー場コースを下る

電波発信機のような施設を通り過ぎ、急斜面を少し下って、広くて斜面の険しいスキー場の上端に出る。ここは、札幌南区、羊が丘、石山区への素晴らし展望台にもなっているので、このコースの見所。すぐ下にはスキー場の駐車場や施設などが見えるけれど、実際にはそこまで下山するのに相当の時間がかかる。

遠くに見える街灯がともる町の風景を撮っていたとき、いきなり数匹の蚊に一気に襲われた。あわててカメラをバッグに入れて、なんとか刺さらずに逃げられた。

登山道はスキー場から一旦離れ、再び森の中に入る。高い笹の中にはとても暗くて、足元がほとんど見えない。それに対して、空はまだけっこう明るくて、歩きづらくはない。しかし、登山道が尾根から斜面に移ったら、もうほとんど真っ暗の状態。なんとか石や木の根っこの輪郭を把握しながら、大きく蛇行する登山道を下っていく。

やがて、小さな沢を木の橋で渡って、スキー場登山口に着いた。ここから黄色い電灯が点いた舗装された林道が走る。一応、地図によると、ここはもう町の中だけど、周りに木が多く、沢に沿った道なので、まだ山の中にいる感じがする。沢が狭くて、川が道路の下のトンネルに流れ込み、しばらく見えなくなる所もある。とにかく、この1kmの細道には、独特な魅力があると昔から思っている。

帰りも、やはり、行きの時と同様に、バスを使わず、また長い徒歩にした。夜の札幌を眺めながら、豊平川、天神山公園、羊ヶ丘通りを通って、20時ごろ家に帰った。